日記:20240916

 水生大海『最後のページをめくるまで』(双葉文庫)を読んだ。「どんでん返し」がテーマの短編が5本収録されている。どれも面白かった。

 

 変な言い方だが、「どんでん返しの王道」みたいな展開が多くて読みやすかった。後味の悪さは王道じゃないかもだけど。作中に登場するイヤな人たちが他人に見えなくて怖かった。彼らのように、私にもいつか報いの時がくるのかもしれない。

 

 同じ作者で同じテーマの短編集『あなたが選ぶ結末は』というのも出ているらしい。書店で探してみようと思う。楽しみ。

 

 この勢いでミステリを読みたい気分になっている。次は、読みかけだった 小西マサテル『名探偵のままでいて』(宝島社)を読もうと思う。楽しみ。

 

 同じ作品でも、単行本で読むか文庫本で読むかによって印象が違う、みたいな感覚についてずっと考えているが、うまく文章にまとめられずにいる。そのうちしっかり書きたい。

 


 

 小西マサテル『名探偵のままでいて』(宝島社)を読んだ。2つ前の段落で「読もうと思う。楽しみ」とは書いたものの、まさかその数時間後に読むとは自分でも思っていなかった。スーパーの開店時間まで読むか~と思ってなんとなく読み始めたら止まらなくなった。スーパーには開店の1時間後に行った。

 

 主人公の祖父(認知症)が、安楽椅子探偵として謎を解き明かす連作短編集。どの話も単体として面白く、そのうえ終章の展開や伏線回収も良かった。おじいちゃんの語り口が心地良い。小川洋子『博士の愛した数式』(新潮文庫)を読んだときも思ったけれど、こういう急に聡明になる老人が好きだ。まあみんなもそうでしょ。

 

 最初は所謂「日常もの」かと思ったが、いつしかだいぶ重い事件へと展開。非日常的な恐ろしい体験って、実際これくらい日常と地続きに訪れると思う。この本は「突然だが突飛ではない展開」だと感じた(辞書的な意味の違いは分からずに書いているが、ニュアンスでなんとかよろしくお願いします)。

 

 主要な登場人物はそれほど多くないが、どの人物もキャラクターがわかりやすく立っていて映像が頭に浮かびやすかった。それでいて誰もが一面的ではなく、人間的な曖昧さもきちんと備えている。正直、ミステリ要素よりも人間ドラマを楽しんで読んでいた。元々は『物語は紫煙の彼方に』という題だったようだが、単行本の出版にあたって改題されたのは正解だと感じた。

 

 ‥‥もちろん原題も良いけどね。古典ミステリの名前が作中にたくさん出てくるので、本作も古典っぽいタイトルにしていたのだと思う。どちらもオシャレでかっこよく、言葉としての優劣はないけれど、読者層や読み方自体の幅を広げるのは改題後だと思う。

 

 続編『名探偵じゃなくても』が出ているらしいのでこちらも読んでみたい。題名について色々考えたあとなので、タイトルが含んでいそうな意味が余計に気になる。楽しみ。

 

 なお本作は2022年に、第21回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞しており、巻末にはその選評も載っていた。私は素直に「おもしれ~」と読んでいたけれど、プロの選評では改善点なども色々と述べられており、「プロってすげ~」と思うなどした。

 

 最終候補作は8作品あったようだが、そのどれもが手放しで褒められてはおらず、ここがこうだから大賞ではない、みたいなことがしっかり述べられていてすごい。あまつさえ大賞の選定経緯については、「とくに強い反対意見の出なかった」本作に決まった、という書かれ方をしていた。私には書評とか無理だな。ぜんぶおもしろいから。

 


 

 井上荒野『小説家の一日』(文藝春秋)を読んだ。今日の私は、読書→読書→買い出し→昼寝→読書、という過ごし方をしたことになる。すごい。

 

 「書くこと」をテーマにした10作の短編集。各話の題材は、SNS投稿・落書き・日記・小説など多様。書くという行為自体よりも、それによって浮かび上がる人間の心理が巧みに描き出されており、どの話も面白かった。10作のうち、妻帯者の子を孕んでしまう話が3作もあってすごかった。

 

 連作ではないが、一部には設定の繋がりを感じさせる話もある。後半に収録されていたある作品を読んで、先に読んでいたある作品の時代設定が確定したときはちょっと興奮した。作品自体の初出は4年しか違わないが、作品世界の中では数十年が経過しており、この両方の時空を垣間見ることができるのは小説の魅力のひとつだと感じた。

 

 前述の『最後のページをめくるまで』と同様、全体的にイヤな人物が多くて重い話だった。ただ文体は重くなく、むしろ軽妙。それゆえにイヤさが質感を保ったまま本の外までまろび出てくるような感覚があり、どの話も自分に引き付けて読まざるを得なかった。私も本作の登場人物のひとりかもしれない、という生々しさがあった。

 

 どの話も、ラストシーンに「完結」っぽさが無いのが好きだった。作品世界はこの前後にも息づいていて、小説として切り出されているのは一部に過ぎない、という了解が、私と作者との間で交わされているような気がして、勝手にも魅力を感じた。ニンテンドー3DSの立体視映像は「飛び出す」というよりも「奥行きがある」感じだったが、私はあれが好きだった。おそらく同じ理由だと思う。

 


 

 スーパーで会計を済ませたら、1,000円以上購入したということで紅白まんじゅうをもらった。こんな施策をやっているとは知らずに来ていたので驚いたし嬉しかった。先着100名限定と書かれており、私が受け取ったあとに店員さん同士が「あと2人やね」と話しているのが聞こえた。私は98人目だったのか。読書によって1時間遅くスーパーを訪れていたが、間に合って良かった。

 

 おそらく、敬老の日だからということで配っていたのだと思う。私のような若造がもらってしまい、少し申し訳なくもあった。こういうのは子どもか老人がもらうべきであって、マージナルマンにまんじゅうは不要なのではないか。私の後にまんじゅうを受け取っていたのは老夫婦だったので、少しだけ安心した。

 


 

 カープの自力優勝の可能性が消滅してしまった。首位である巨人との直接対決の都合上、4位の横浜に自力優勝の可能性が残っているというのが不思議でおもしろい。現在3位のカープは、もう横浜と1ゲーム差まできてしまった。マジック点灯がどうのと騒いでいたのが遠い昔のようだ。なんとかAクラスには残ってほしい。がんばれ~!

 


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